「ドラゴンヘッドは漫画だけじゃ物足りない!」の記事

「ドラゴンヘッド」は、漫画雑誌「週刊ヤングマガジン」に連載の望月峯太郎氏の作品。1997年には、第21回講談社漫画賞一般部門を受賞。累計発行部数は650万部を記録する大ヒット。修学旅行の帰り道、突然発生した大地震。極限下での「人間の本質」とは?

「ドラゴンヘッド」は、漫画雑誌「週刊ヤングマガジン」に連載されていた「望月峯太郎」氏の作品です。1997年には、第21回講談社漫画賞一般部門を受賞しており、累計での発行部数は650万部を記録する大ヒットとなりました。
ドラゴンヘッドとはどんな漫画かというと・・・?修学旅行の帰り道、突然発生した大地震によって、主人公の「青木輝」らが乗車していた新幹線は、浜松駅近くのトンネル内部で、凄惨な脱線事故を起こしてしまいます。トンネルの出入り口は地震によって崩れてしまっており、外界との連絡が取れない状態。たった三人の生存者だった、主人公の中学生、青木輝、瀬戸憧子、高橋ノブオは、いつかきっと救助されるだろうとの可能性に希望をもち、この絶望的な状況下で生きのびようとするのですが…。「死」と突然、向かい合わせとなった、人間の「極限状態」に追い込まれた「狂気と暴力」。「人間の本質」と「究極の恐怖」を、圧倒的な描写で描かれています。
漫画「ドラゴンヘッド」の登場人物達は、中学生など若者が多いのですが、それだけに大地震という未曾有の出来事に遭遇してしまったときの心理的なショックは想像を超えるものではないでしょうか。あの阪神大震災においても、心理的な負荷を大いに受けてしまったのは、大人たちももちろん多少にかかわらずあったでしょうが、やはり、小さな子供達や若くて思春期にある子供達。「ドラゴンへッド」の登場人物のなかで、高橋ノブオという男子が出てきますが、この彼は閉じ込められたトンネル内で、心理的な圧迫のなか、元の性格とは違った攻撃的な性質に変わってしまいます。変わってしまった、というよりは、今までの生活のなかで心に蓄積され、抑圧されてきたものが、「大地震」というかつて経験したことのない、特異な状況下におかれることで、突如として噴出してきた、ともいえるかもしれません。他の登場人物である、自衛隊員の三人も、本来は救助に邁進しなければならないはずであったのですが、隊からはずれて「個」の状態になると、救助隊員としてあるまじき行動に出ます。彼らも、日ごろの何らかの抑圧などが一気に噴出してしまったのでしょうか。それとも、凄惨な状況を目の当たりにし、理性を失ってしまったのでしょうか。
阪神大震災の時には、このような暴力的なものはさすがになかったものの、便乗値上げの悪質な商売がありました。着の身着のままでやっと逃げ出してきたため、食べるものもなく、おなかをすかせて号泣している女の子と母親が、焼き芋の商売をしている人のところへ行ってみると、小さな小さな焼き芋を途方もない値段で売っている。これでは到底買ってやれないからあきらめるように母親はさとしますが、小さな子供のこと、女の子はますます腹をすかせて号泣する。それを偶然見ていた、近隣の市からのボランティアの方がその親子にかけより、泣いている女の子のスカートをふろしきのように広げさせ、そこへ持ちきれないほどおにぎりを持たせてやったそうです。
「ドラゴンヘッド」にあるような大地震が起きるとも限らない。しかし、起きたしまったとき、人間としてどう生きるのか。それを私達は問われているのかもしれませんね。